The King's Curse

Author: Philippa Gregory
Category: Historical Fiction

Length:   624 pages /24hrs and 10mins

Total recommends: 
★★★
Difficulty: 
★★☆☆ 
Story:
★★★
Can't-sleep-degree:
★★☆☆
Romance-packed-degree:
☆☆☆☆
Mystery-packed-degree:
★★☆☆ 

2015年英語読書日記 No.43(耳読書No.30)307冊目

圧巻!教科書に出てこない本物のヘンリー8世像を描く、イギリス薔薇戦争の「カズンズワーシリーズ」シリーズ最終話


ヘンリー8世の絵が表紙だったので読むつもりはなかったこの本です。しかしアマゾンのコメントで「Cousins' War 」最終章を飾るにふさわしい」とどなたかが書いていたのを読んで、飛びつきました。

プランタジネット朝ばら戦争というのが起こるんですが、いわゆる内輪もめ。王権を争って兄弟、従妹がどろどろの覇権争いに突入します。で、従妹同士の戦争から「Cousins' War 」(いとこ戦争)と呼ばれています。薔薇は紋章で、白薔薇がヨーク家を表し、赤薔薇がランカスター家を表しています。

このばら戦争終結は敵同士のランカスター家の末裔であるヘンリー7世とヨーク家の王の娘エリザベスの結婚によって両家が結ばれその子供が王家を継ぐことで終結を迎えます。

その息子の一人がかの有名なヘンリー8世。6人の妻のうち二人を断頭台に送り、カソリックと断絶して英国国教会を作り、恐怖政治を強いた王です。父王の家名からテューダー朝と呼ばれています。娘は有名なエリザベス女王ですね。この作品では赤ちゃんで登場。それより姉のメアリーに焦点が当てられています。

非常に強い国のイメージを出すことには成功しているので、英国王の中でも一番有名な王様。ロンドン塔に行くと、ヘンリー8世の鎧を見ることができるのですが、その大きさにちょっとびっくりします。映画では「ブーリン家の姉妹」という作品で若いヘンリー8世が登場します。その頃はハンサムだったらしいですが、年齢を重ねるにつれてかなりサイズがかわったんだなという印象です。

イギリス史は大好きな私なんですが、かなり暗いテューダー朝なので、フィリッパグレゴリーの史実をもとにした話は私はテューダー朝は避けて、このCousins' Warシリーズしか読んでいません。 

このお話はテューダー朝になってからの時代なんですが、主人公はヨーク王家の唯一の生き残りである女性が主人公です。ヘンリー8世の母(ヨーク、エドワード4世の娘エリザベス)の従妹、すなわちエドワード王の弟のジョージ・クラランスの娘です。弟はロンドン塔に連れ去られて猜疑心の強いヘンリー7世(ヘンリー8世)のパラノイアの犠牲、すなわち処刑されました。

その女性の目を通して描かれるテューダー朝と言ってもいいと思います。

いつの日かヨークの王子が現れて、王権をとってかわられるかもしれない、という恐怖感を持ち続けたヘンリー7世。それはこれの前作”White Princess"で詳しく描かれています。

その息子のヘンリー8世は母はヨーク家、父はテューダー家なので、兄アーサーが流行り病で若くしてなくなってしまったために、兄に嫁いできたスペイン王女と結婚して、国民の大歓迎を受けます。しかし、兄のように王としての教育を受けず、甘やかされてきたヘンリー(もとはハリー)はなんでも思い通りにしないと気が済まない。王国をイエスマンだけ残してあとは処刑してしまうという暴挙に走ります。これは国として悲劇としか言いようがない展開です。

女王とともに、ヘンリー8世を赤ちゃんの頃から世話をしていた主人公エリザベス。やがて狂信者のような王に変貌するまでの王の人生を見届けるようなその立ち位置。そこに視点をおいて描かれた世界は読むものを圧倒します。

ヨーク王家として王となったエドワード4世の妃となったエリザベス・ウッドヴィルの母はフランスの貴族です。この母と娘は物語の中では魔女のような存在として描かれています。ヘンリー8世の祖母に当たる魔女の娘であり、魔女と噂されたエリザベスが「ヨーク家を滅ぼした王の末裔はすべて死に絶えるだろう」という呪いをかけます。そのあたりはフィクションも入っているのですが、これがシリーズを通してすごく生きています。

その呪いが現実化していくかのように、ヘンリー8世の元に生まれてくる息子はすべて死に絶えてしまい、王女もみな子供ができない体。ヘンリー王は嘆き苦しみ続けます。祖母のエリザベスがかけた呪いが血のつながった子孫に及んでしまう結果となってしまう。自分もそれに加担していた母エリザベスはそれを一番気にかけていて、今回の主人公に密かに悩みを打ち明けます。

著者があとがきで書いているのですが、実際にはフランスから嫁いだジャケッタ(ヘンリー8世のひいおばあちゃん)から受け継いだ遺伝病のせいで子供に特に男の子に致命的な欠陥が受け継がれていったのではとありました。知る限りでは、誰かから梅毒をもらって最後は苦しむに至ったということしかきいたことがなかったので、なるほどの解説でした。あれほどたくさんの王子を亡くしていたのも知りませんでした。

その呪いを唯一知っていたが、決して口外することのなかった主人公エリザベス。(エリザベスが多すぎてややこしいですよね。同じ名前がほんとに多いんです。)父ジョージは謀反の疑いで兄エドワード4世に処刑され、弟はロンドン塔に何年も閉じ込められたあと、ヘンリー7世に処刑されるという悲劇を経験した彼女。それゆえ、ロンドン塔に入ることに生涯恐怖を感じ続けます。彼女の血筋は父は王弟、母は当時キングメーカーと言われていた王のいとこにあたるウォーリック家の末裔。なので、どこまでもヨーク王家を背負っていた女性なんですが、ヘンリー7世の母の息のかかった一介の名もない騎士と結婚して自分の王家の名前を消し去ることを決意します。

そして静かに、静かに生き残る道を選びながら、テューダー王家が国をかく乱していくのを見届けていくことになります。

淡々と話は破局に向かって語られるのですが、なぜかものすごくハラハラします。いつ王の気が変って、誰が殺されるのか。主人公の目から語られる中世の世界でも、やはり、独裁者という名前の人物はつくられるべきではないなと思わせてくれます。

イギリス史を愛する私なので、細かい部分までこの作品は堪能しました。エリザベス女王の母として断頭台の露ときえたアン・ブーリンはここでは案外悪役です。以前にもこのシリーズのことを書いたときに同じようなことを書いたんですが、このシリーズを通して読む醍醐味は、

主人公が変って、視点が変ると、悪役が悪役でなくなったり、逆であったりということが起こることです。視点でものの見方が変る。歴史もそうですね。かつてウィンストン・チャーチルが「歴史は勝者につくられたものだ」というのもうなずけます。

重厚なテューダー朝もかなり歴史を歪曲して成り立っていたものです。その祖になったヘンリー7世は父方をたどると、王家とほとんど関係がない。王を亡くした妃がその召使と再婚してできた子供を父として持っていただけ。母方のランカスター家の血筋だけでごり押して王になったがゆえにテューダー時代はああなったようです。マニアックになっていくのでこの辺でやめときます(笑)

英語はクリアなBritish アクセントで、ゆっくりで聴きやすかったです。しかも、これの前は確かグラスゴー訛り入りの速いイギリスサスペンスだったので、なおさらゆっくりに感じました。あっちが倍速みたいに感じるほどです。

時代物はその時代独特の用語や相関図が頭に描ければ、かえってよみやすいです。現代で使われるイディオムが少ないので、英語学習者には楽なのではないかとさえ最近は思うようになってきています。

とにかく最後の最後まで気が許せない展開で、極めつけは最後のシーン。もう圧巻でした。

読んでよかった。

こういうのは書き出すと書き終わらないので、ただのおたくになってきたし、この辺で止めときます。

このカズンシリーズは3巻分のお話がドラマ化されています。DVD取り寄せてみました。主演は映画Mission Impossibleで活躍してたかっこいい女スパイ役の人です。
 
これ見るとこのお話の前段階が把握できます。
シリーズもセットであるみたいですね。

私は1冊はイギリス旅行で読んで、いくつかは旅行中に買って帰りました。一冊は友人のイギリス人が帰りに読むと、持ってかれたので、イギリスにあります(笑)でも1作品を除いてすべてaudibleで聞きました。イギリス英語でイギリスを旅してる気分が味わえて楽しかったです。

ヒストリカルストーリーの何が好きかというと、主人公の目を通して、ドラマが展開されながら、実際にその時代にいるような感覚を味わいながら歴史が知れるということにつきます。ライブで歴史を味わっているその臨場感に惹かれます。これは少女のころから持っている自分の特徴。感情移入して頭の中で歴史上の人物が動き出すのがたまりません。

それを骨の髄まで味あわせてくれるのがこの作家さんです。かなり濃い世界が展開されますが、強烈なファンがいるのもうなずけます。

さて、ついつい長くなって、ミニ講義っぽくなってきた。やめときます。イギリス人の友人にも「私よりもイギリス史の中世に詳しい」と言われたオタクです。

読んでいただきありがとうございました。

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