Never Let Me Go

Never Let Me Go. Film Tie-In
Never Let Me Go. Film Tie-In
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心のひだをていねいにそっと描き出す。車の中から雲と雨の風景を見ているように深く静かに進行するはかない命の物語

Author: Kazuo Ishiguro
Period: 2.21.2011~2.27.2011 (7days)
Category:Fiction
288pages

Total recommends: ★★★★★
Difficulty:★★★☆☆
Story:★★★★☆
can't-sleep-dgree★☆☆☆☆
Mystery-packed-degree:★★★☆☆
Romance-packed-degree:★★★☆☆

基準や感想はあくまで一英語学習者の主観に基づくものです。ご了承ください。

読み始めた最初に感じた何かがずっとずっと奥深く蓄積していきました。英語が超難しいわけでもないのに、時間をかけて読みました。深く静かに。邦題は「私を離さないで」うまいなあ。翻訳のタイトルがそのまま映画のタイトルにもなっているようですね。

感じたものは「違和感」「不安」「静けさ」ごちゃ混ぜにしたような感覚。その感覚は最後の最後まで引きずられます。昨日最後の100ページあまりを読むときに、最後の40ページを残して眠りに着きましたが、朝どうしても気になって目が覚めたので早朝に読み終わりました。ちょっとQueasyな感覚でした。

31歳のキャシーはヘルシャムと呼ばれるイギリスの奥深くの寄宿学校でずっと過ごした経験を持つ。彼女は今の仕事をしながら、かつて同じ学校で過ごしたルースとトミーに出会い、ヘルシャムで過ごしたことや、その後移ったコテージでの出来事と今までのことを淡々と語りだす。その語りの中から姿を現すのは戦慄の事実だった。彼らの存在とは何なのか。

この物語の凄さは一定の「不安定さ」を読んでいる間同じレベルで保ち続ける淡々とした語りです。真実を垣間見せながらもその不安定さを最後まで引っ張っていって真実が明らかになる。決して複雑な話ではなく、こうなんだろうなと思いながらも最後にその不安定さの出所を感じ取る。私が感じたひとつは深い倫理観。

物語の構成上詳しくは語れないのですが、本を通じてまたイギリスを旅した気分になりました。なだらかな丘が続き、木々の中にあるHailshamの石作りの寄宿学校。閉ざされた世界の中で子供達が作品を作ったり、ひそひそ話をしたり。いつか来るその日に向かって繰り広げられる彼らのファンタジー。淡いはかない思い。外の世界はその対比として、現実として語られます。イギリス海岸沿いの曇った日の風景。ただようボート。降っては止む雨や度々出てくる有刺鉄線は主人公達の心をうつしているよう。

そんな風景を思い浮かべながらこの本を閉じました。

心情や風景描写がとても細やかで、一つ一つ薄いベールをはがしていくようにして語られる物語。めくられた中にあるのは孤独ではりめぐらされた深い悲しみに満ちた空虚のような世界。私はそう感じました。行間に張り巡らされた世界をどれだけ自分が捉えられたのか不安にさせられる話でもありました。静かに静かに何かを訴えかけられている感じ。あとを引きます。

もっともっと英語でも日本語でも本を読まないとという思いと、ちょっとヤスみたい思いが交錯した本でした。感じた思いを言い表せないもどかしさを感じながら。